ある日のこと、そこを旅人が通りました。老人は戦争について、どうなったかとたずねました。
すると、旅人は、小さな国が負けて、その国の兵士はみなごろしになって、戦争は終わったということを告げました。
老人は、そんなら青年も死んだのではないかと思いました。そんなことを気にかけながら石碑の礎に腰をかけて、うつむいていますと、いつか知らず、うとうとと居眠りをしました。かなたから、おおぜいの人のくるけはいがしました。見ると、一列の軍隊でありました。
そして馬に乗ってそれを指揮するのは、かの青年でありました。
その軍隊はきわめて静粛で声ひとつたてません。
やがて老人の前を通るときに、青年は黙礼をして、ばらの花をかいだのでありました。
老人は、なにかものをいおうとすると目がさめました。それはまったく夢であったのです。
それから一月ばかりしますと、野ばらが枯れてしまいました。
その年の秋、老人は南の方へ暇をもらって帰りました。